交通事故直後に示談してはいけない理由

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交通事故の被害に遭った場合、多くの方が加害者との示談で解決します。しかし、示談はいつでも行えばよいというわけではありません。

今回は、

・交通事故における示談の意味

・交通事故直後に示談してはいけない理由

・交通事故の示談のタイミング

について解説します。

 1.交通事故における示談の意味

交通事故における示談とは、被害者と加害者とが

 

☑ 被害者に発生した損害費目

☑ 損害費目ごとに発生する金額

 

について、裁判手続きによらない(話し合い)で決めることです。法律上は「和解」といいます(民法695条)。

通常は、取り決めた内容を書面(書面の表題は合意書、和解契約書など)に残し、当事者が書面にサインした段階で示談(和解)が成立します。

ここで注意しなければならない点は、書面にサインした時点で一定程度の確率で、加害者から示談金(賠償金)を支払われることが約束される一方で、

 

いったん取り決めた金額以上の金額を受け取ることができなくなってしまう

 

という点です。つまり、示談するということは、

 

本来、被害者が加害者に対して請求できる示談金を自ら放棄してしまうこと

 

を意味しているのです。

 

2.交通事故直後に示談してはいけない理由

交通事故直後に示談してはいけない理由としては、加害者に対して請求できる示談金を自ら放棄してしまうことのほかにも以下の点を挙げることができます。

⑴ 紛争の火種になりかねない

交通事故直後に示談したとしても、交通事故の示談交渉に慣れていないがために、そもそも当事者間で何を合意したのかその内容が曖昧という場合が多いかと思われます。そして、合意した内容が曖昧だからこそ当事者間で行き違いが生じやすく、その結果、適切な示談金を受け取れない、受け取るまでの期間が長期化するなどの事態へと発展することが懸念されます。

⑵ 交通事故直後は怪我の内容、程度が不明

また、交通事故直後は怪我の内容、程度が不明です。

たとえ通事故直後は怪我の症状が軽くても、数日経って重くなることも十分考えられます。症状が重くなればなるほど、その分、受け取ることができる示談金は増額する可能性があります。しかし、交通事故直後に示談してしまうと、本来受け取ることができたはずの示談金を放棄してしまうことにも繋がりかねません。

⑶ 交通事故直後は事故内容、過失割合が不明

さらに、交通事故直後は事故内容が明らかとなっていません。事故内容が明らかでないということは、示談金算定の基礎となる過失割合も決まっていないということです。しかし、交通事故直後に示談してしまうと、本当はご自身に非(落ち度、過失)がない点も非があると認めたと加害者に受け止められてしまう可能性があります。その結果、過失割合を加算され、示談金を減額されてしまうことにも繋がりかねません。

 

3.交通事故の示談のタイミング

交通事故直後に示談してはならないとしたら、いつ示談すべきなのでしょうか?

⑴ 後遺障害が残らない場合

後遺障害が残らない場合は、怪我の治療が終わった後です。

怪我の治療が終わった後であれば、傷害分と言われる「治療費」、「休業損害」、「傷害慰謝料」などの損害費目の金額を確定させることができるからです。また、この段階になれば交通事故内容も明らかとなり、過失割合も確定させることができるでしょう。

⑵ 後遺障害が残る場合

後遺障害が残る可能性のある場合は、後遺障害等級認定のための申請の結果が出た後です。

後遺障害が残る可能性がある場合、後遺障害分と言われる「後遺障害慰謝料」、「後遺障害逸失利益」を示談金に含めることができる可能性があるところ、申請を経てみなければ示談金の額を確定させることができないからです。

 

4.まとめ

示談は、後遺障害が残らない場合は「怪我の治療が終わった後」、後遺障害が残る可能性がある場合は「後遺障害等級認定のための申請の結果が出た後」に行いましょう。

                                     以上

 

交通事故紛争処理センターとは?特徴や利用手続きについて解説

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 交通事故の紛争を解決するための手段として、交通事故紛争処理センターを利用する方法があります。今回は、あまり知られていない交通事故紛争処理センターの特徴や利用手続きについて解説します。

 

1.交通事故の解決方法

 

そもそも交通事故の解決方法には大きく分けて「(示談)交渉(話し合い)」と「裁判」があります。

まず、被害者(あるいはその代理人弁護士)が加害者側(加害者の保険会社、加害者の代理人弁護士あるいは加害者本人)と(示談)交渉し、それでも折り合いがつかなければ裁判という流れです。

しかし、(示談)交渉と裁判との間にあるともいうべき解決法が「交通事故紛争処理センターを利用する」という解決法です。

 

2.交通事故紛争処理センターとは

 

交通事故紛争処理センターとは、一言でいうと、示談を促してくれる機関です。

したがって、交通事故処理センターは示談できる状態とならない限り利用できないことに注意が必要です。「示談できる状態」とは「損害賠償金を確定できる状態」ということですから、たとえば、症状固定前の治療中の段階、症状固定後の後遺障害等級認定の申請を行っている段階では交通事故紛争処理センターを使うことはできません。

 

交通事故処理センターは全国11か所(東京本部、札幌支部、仙台支部、名古屋支部、大阪支部、広島支部、高松支部、福岡支部、さいたま相談室、金沢相談室、静岡相談室)に設けられています。

 

www.jcstad.or.jp

 

 

3.交通事故紛争処理センターの特徴(メリット)

 

交通事故紛争処理センターの特徴(メリット)は以下のとおりです。

⑴ 利用にかかる費用は無料

 

示談に向けた法律相談、示談のあっ旋、あっ旋が不調に終わった場合の審査手続にかかる費用は無料です。

⑵ スピーディーに解決できる

 

通常の示談交渉よりかは時間がかかりますが、裁判よりかは早く解決に至ることが可能です。

⑶ 示談金(損害賠償金)を増額できる可能性がある

 

示談あっ旋の際に提示される示談金は、裁判所(弁護士)基準という慰謝料の算定基準の中でもっとも高額となりうる基準で算定されるからです。

⑷ 第三者が間に入り、公平・中立な判断を得られる

 

通常の示談交渉だと「被害者VS加害者」と構図ですが、センター利用の場合、その間にセンターから委託を受けた弁護士や審査員が入ります。そして、この公平・中立な弁護士や審査員から妥当な判断を得られやすくなります。

⑸ 保険会社は審査結果に拘束される

 

手続きが示談あっ旋から審査手続に移行し、審査結果が出た場合は、保険会社はその結果を尊重する義務があります。

 

4.交通事故紛争処理センターの利用手続き

 

交通事故紛争処理センターの利用手続きは以下のとおりです。

⑴ 利用の予約

 

利用するセンターへ電話し、手続を利用したい旨を伝え、相談日時の予約を入れます。

⑵ 必要書類の準備、利用申込書への記入

 

センターから利用申込書が送られてきますから、必要事項を記入します。また、同時に必要書類を準備します。

⑶ 法律相談

 

相談日時に利用申込書、必要書類等をもってセンターへ行きます。そこで、示談あっ旋を前提として法律相談を受けます。

⑷ 示談あっ旋

 

相談を受けた弁護士(相談担当弁護士)が、示談あっ旋が適当だと判断した場合は、あっ旋手続きに移行します。あっ旋手続きでは、被害者、相談弁護士、保険会社の担当者の3者で示談に向けた話し合いをします。ここで、相談担当弁護士が提案した示談案に合意した場合は示談書を取り交わし、手続きは終了です。

⑸ 審査手続

 

示談案に納得がいかず、あっ旋が不調に終わった場合には審査手続へ移行します。審査手続では審査委員による裁定が下され、被害者が納得した場合には示談書を取り交わし、手続きは終了です(納得しない場合は示談不成立として手続き終了です)。

 

5.おわりに

 

交通事故紛争処理センターの利用は、交通事故紛争を解決するための手段としてあまり知られていません。しかし、前述のとおり、利用には大きなメリットがありますから、一度、利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

                                                                                                                                      

実況見分調書とは?作成目的、取り寄せ先等を解説

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人身事故で必ず行われるのが警察の実況見分です。そこで、今回は、警察が作成する実況見分調書について解説いたします。

 

1.実況見分調書とは

 

交通事故における実況見分調書とは、警察が交通事故現場で交通事故状況を見分(見たり、聴いたり)した結果を記載した書面のことをいいます。交通事故状況といいますが、具体的には

 

・見分の日時、場所

・見分場所

・交通事故現場の道路状況

・加害者・被害者の車の状況

・立会人(加害者、被害者、目撃者)の指示説明

が記載されており、交通事故状況をよく視覚化するため、実況見分調書には

 

・交通事故現場見取り図や写真

 

などが添付されています。

 

2.実況見分調書を作成する目的

 

警察が実況見分調書を作成する目的は、刑事事件における交通事故状況の立証のためです。

警察は民事不介入の立場ですから、実況見分調書を加害者に対する損害賠償請求のため、つまり民事事件のために作成しているわけではありません。また、交通事故状況は加害者や被害者の話のみならず、図や写真などを使うことによって視覚的に表現した方が分かりやすいといえます。

そこで、警察は刑事事件において被疑者、被告人の交通事故状況の立証を容易にするために実況見分調書を作成しているのです。

 

3.民事事件と実況見分調書

 

もっとも、民事事件において、実況見分調書が全く活用されないかといえば、そういうわけではありません。

たとえば、民事事件においては、

 

被害者側と加害者側との間で過失割合を巡って争いが生じている場合

 

に、交通事故状況を確認したい、というときに実況見分調書が活用されます

 

4.実況見分調書の取り寄せ先、取り寄せ方法

 

実況見分調書は、加害者(刑事事件では被疑者・被告人)の刑事手続きがどの段階にあるかによって取り寄せ方や取り寄せ方法などが異なります。

⑴ 加害者に対して刑事処分(起訴、不起訴)が下される前の段階

 

 

この段階では、まだ取り寄せることができません。

 

⑵ 加害者の刑事処分が不起訴処分となった後

 

不起訴処分となった刑事記録(不起訴記録)は警察から事件が送致された送致先の「検察庁」で保管されています。不起訴記録は不開示が原則ですが、民事の損害賠償請求のためなど、特定の目的が認められる場合には実況見分調書を取り寄せることが可能です。取り寄せる方法は以下のとおりです。

① 弁護士から検察庁への照会(弁護士法23条照会)による方法

② 被害者本人が検察庁へ出向き申請する方法

③ 代理人弁護士又は事務員が検察庁へ出向き取り寄せる方法

⑶ 加害者が起訴された後

 

検察官が加害者を起訴した後、裁判所に刑事記録を提出した後、刑事記録は「裁判所」あります。被害者、被害者遺族、代理人弁護士は裁判所に対して刑事記録の謄写申請を行って実況見分調書を取り寄せます。

⑷ 加害者の刑事裁判が確定した後

 

加害者に判決が下され、刑事裁判が確定した後は、刑事記録は第一審裁判所に対応する「検察庁」で保管されます。そして、以下の方法により、検察庁に対して申請を行って実況見分調書を取り寄せます。

① 被害者本人が検察庁へ出向き申請する方法

② 代理人弁護士又は事務員が検察庁へ出向き申請する方法

 

5.まとめ

 

加害者に対する害賠償請求する民事の場面では、実況見分調書は、過失割合などを巡って争いが生じ、交通事故状況を詳細に検討しなければならない場合に必要となる書類です。実況見分調書は刑事訴追のため警察が作成するものですが、刑事事件の段階によって申請先が「検察庁」あるいは「裁判所」となります。実況見分調書を取り寄せる際は、まずは加害者の刑事手続きがどの段階まで進んでいるのか確認する必要があります。

交通事故における示談金と慰謝料の違いとは?

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交通事故においては必ず示談金、慰謝料の額がいくらとなるか、という点が一つの関心事でもあり争点でもあります。しかし、この示談金と慰謝料を明確に区別できている方はどれほどおられるでしょうか?

示談金と慰謝料は別物ですが、両者を同じものと考えていると大きな落とし穴にはまり、本来受け取れるはずの賠償金を受け取れない可能性もでてきます。

そこで、今回は示談金と慰謝料の違いについて解説します。

 

1.慰謝料とは

 

慰謝料とは、交通事故によって受けた精神的苦痛に対する賠償金のことをいいます。交通事故の慰謝料は傷害(入通院)慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡による慰謝料があり、これらすべては「損害賠償金」の「費目」の一部です。

傷害(入通院)慰謝料は症状固定(怪我の症状が改善する見込みがなくなると判断される)前に、何日、どの程度の期間、病院へ通院するかなどによって額が異なってきます。後遺障害慰謝料は、症状固定後に後遺障害等級認定の申請を行い、認知を受けた等級などによって額が異なってきます。

 

2.示談金とは

 

示談金とは、示談交渉によって得た損害賠償金のことです。「1」でご説明したとおり、傷害(入通院)慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡による慰謝料は損害賠償金の費目の一部ですから、これら3つの慰謝料は示談金の一部、ということになります。

示談金はつまりは損害賠償金ですから、損害の費目は慰謝料のほかにも以下のものがあります。まず、人的損害の費目は財産的損害と精神的損害に区別されます。そして、財産的損害は治療費などの積極損害と、休業損害、後遺障害逸失利益、死亡による逸失利益の消極損害があります。精神的損害は先ほどご紹介した3つの慰謝料です。次に、人的損害に対して物的損害があります。物的損害にも財産的損害と意外かもしれませんが精神的損害があります。そして、財産的損害は修理代などの積極損害と休車損害などの消極損害があります。まとめると以下のとおりとなります。

 

【損害賠償金の主な損害費目】

  • 人的損害

・財産的損害

→積極損害

 →治療費など

→消極損害

 →休業損害

 →後遺障害逸失利益

 →死亡による逸失利益

・精神的損害

→傷害(入通院)慰謝料

→後遺障害慰謝料

→死亡慰謝料

  • 物的損害

・財産的損害

→積極損害

 →修理代など

→消極損害

 →休車損害など

・精神的損害

 

示談をする際は、上記損害賠償金の損害費目がきちんと含まれており、金額が正しいのか細かくチェックした上で示談書(和解契約書)にサインする必要があります

 

3.示談はいつするの?示談金はいつ確定させるの?

 

示談では確定された全ての損害費目の損害金の金額をチェックする必要があります。したがって、示談をするのは全ての損害費目の損害金が確定した後、ということになります。たまに、早く交通事故のことを忘れたいから手っ取り早く交通事故直後に示談したい、という方がおられます。しかし、交通事故直後は当然のことながら賠償金を確定することができませんから、交通事故直後に加害者と示談することだけは避けなければなりません。

では、全ての損害費目の損害金が確定した後、とは具体的にいつかといえば、傷害の場合で、後遺障害が残らない場合は

 

治療(通院)が終わった後(症状固定の後)

 

又は、後遺障害が残った場合は

 

後遺障害等級認定が確定した後

 

ということになります。前者の場合は、傷害費目と言われる治療費、休業損害、傷害(入通院)慰謝料につき、基本的に症状固定までには確定することができるからです。他方、後者の場合、後遺障害等級認定を受けてみなければ損害金を確定することができないからです。後遺障害等級を受けてみなければ損害金を確定できない費目として、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料などがあります。

 

 

しっかり理解していないと本来受け取れるはずの賠償金を受け取れない可能性もありますので、気を付けてくださいね。

                                                                                                      

                                                                                                                            

 

交通事故の治療費はどのように請求するのか?

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交通事故に遭った場合、誰に、どのように治療費を請求するのか、どのような流れで支払われるのか疑問に思われることと思います。

そこで、今回は、以下の3つのケースごとに、治療費をどのように請求するのかについて解説したいと思います。

 

1.加害者が任意保険にも自賠責保険にも加入している場合

 

加害者が任意保険にも自賠責保険にも加入している場合は、加害者の任意保険会社が病院に治療費を支払ってくれる場合と支払ってくれない場合があります。

⑴ 任意保険会社が病院に治療費を支払ってくれる場合

 

この場合は、任意保険会社が被害者へ「病院への医療照会に関する同意書」、「一括対応に関する同意書」が送付されてきます。そして、被害者がこれにサインし任意保険会社へ返送することにより、任意保険会社が「一括対応に関する同意書」に基づいて病院へ治療費を支払います。一括対応とは、任意保険会社が自賠責保険会社の負担部分も含めて一括して支払いに対応します、という意味です。また、任意保険会社は病院に対し、逐一、被害者の怪我の状況、回復具合等を確認しなければ病院にいくら治療費を支払えばよいのか分からないことから、被害者から医療照会に関する同意書も取り付けるようにしているのです。

もっとも、任意保険会社から病院へ治療費が支払われるまでにはブランクがあります。しかし、病院を受診するまでの間に、あらかじめ任意保険会社から一括対応する旨を言われている場合は、病院を受診した際に「加害者の任意保険会社が治療費を支払うことになっている。」と伝えれば治療費を負担せずに受診できるでしょう。また、対応が早い任意保険会社であれば先に病院へ治療費を支払う旨を伝えている場合もあります。その場合も、治療費を負担することなく受診できるでしょう。他方で、任意保険会社の対応が何らされていない場合は、通常、被害者が治療費を立て替えることが多いかと思います。その場合は、必ず健康保険証を使って受診しましょう。また、後日、加害者側に立て替えた分を請求するために領収書は必ず保管しておきます。国民健康保険なら市区町村の窓口で、会社員・公務員で健康保険なら勤務先の人事係で、「第三者行為による傷害の届出」を保険者宛に提出してもらいましょう。

⑵ 任意保険会社が病院に治療費を支払ってくれない場合

 

交通事故の過失割合を巡って加害者と争っている場合などは、任意保険会社が病院に治療費を支払ってくれない場合があります。この場合は、まず加害者の自賠責保険会社に対して被害者請求することが考えられます。また、被害者が加入している任意保険を確認してみましょう。そして、人身傷害保険特約という特約がついている場合は過失割合に関係なく、ご自身の保険から保険金が支払われます。特約を使うことによって等級が下がることはありませんから、ぜひ検討してみましょう。

 

2.加害者が自賠責保険にのみ加入している場合(任意保険に加入していない場合)

 

加害者が自賠責保険にしか加入していない場合は、まずは被害者が治療費を充て換え、後日、自賠責保険会社に対して被害者請求して立て替えた分を取り返す必要があるでしょう。また、先ほど触れた人身傷害保険を使うこともできます。しかし、自賠責保険で賄えるのは傷害(治療費、休業損害、傷害慰謝料)の場合、120万円までですし、自賠責保険、人身傷害保険では物損の損害を賄うことができません。その場合は、加害者に直接請求することも検討します。

 3・加害者が任意保険にも自賠責保険にも加入していない場合

 

 

この場合は、加害者本人に直接請求するしかありません。しかし、加害者に賠償金を支払えるだけの資力があるかどうかは不透明です。そのときの場合に備えて、ご自身の任意保険で無保険車傷害特約を付けておきましょう。この特約を付けていれば、仮に加害者の車が無保険車でもご自身の保険会社から保険金を受け取ることが可能となり、実質賠償を受けたのと同じ状態となるからです。

 

                                                                                                      

治療費をどのように請求するのか参考になりましたら幸いです。

 

運転免許の更新時期なのに、免許センターが休止?対応方法の解説

おはようございます。ステイ・ホーム期間にジャズ三昧の jazz_jikoです。

 

今日は、「運転免許更新業務の休止」を話題に書いていきたいと思います。

 

そうです。運転免許を持っている方ならお馴染みの、忘れたころにやって来る「運転免許更新のお知らせ」というハガキのアレです。

 

運転免許更新期間は、誕生日の月を含めた前後1ヶ月です。例えば、7月1日生まれの人なら、6月1日~8月31日までが更新期間です。

 

この更新期間のうちに、各運転免許試験場や、自動車運転免許センターへ行き、写真の撮り直し、継続講習を受ける必要があります。

 

しかし、今年はなんと新型コロナウイルスによる感染拡大防止のため、各運転免許試験場や免許センターでの免許更新業務が、休止しているのです。

 

では、もうハガキが来てしまった人や、近々免許更新の時期となる人はどうすれば良いのでしょうか。今回は、そんな方の対応方法について解説します。

 

各運転免許試験場・免許センターの休止期間

 

運転免許証

 

運転免許証の更新をすることができる各運転免許試験場・免許センターの休止期間は、各都道府県によって異なります。

 

例えば、東京都では令和2年4月15日から休止となっていますが、いつから更新業務を再開するかは、公表されていません。

 

また、日本全国で唯一感染者の出ていない岩手県でも、緊急事態宣言の延長に伴い、「令和2年5月7日から、当面の間」免許更新業務を休止としています。

 

これらのことから、各都道府県の感染者数の推移によって、免許更新業務が再開されるタイミングは異なる可能性が高いです。免許更新が迫っている方は、ご自身の住民票のある都道府県の最新情報をチェックするよう心掛けてください。

 

対象となる有効期限

 

ここからは東京都を例に記載します。東京都では、運転免許の有効期限が令和2年7月31日までの方を対象に、「有効期限延長の特例措置」をすることとしています。

 

もし手元に既にハガキが届いている方は、おそらく7月31日より早く有効期限が来るはずですので、全員対象となります。

 

覚えておいて欲しいのは、有効期限の更新手続きを「免除」するのではなく、「延長」するということです。各都道府県が定める方法で延長手続きをすると、自身の運転免許の有効期限を「3カ月延長する」ことになります。

 

つまり、5月30日が有効期限となっている方が今回の特例で延長手続きをすると、新たに同年の8月30日が有効期限となり、それまでに更新手続きをしなければいけない、というようになります。

 

更新手続きそのものが免除されるわけではないので、覚えておきましょう。

 

有効期限延長の手続方法

 

有効期限延長の手続きは、各都道府県の指定する窓口で行うか、郵送で申請することもできます。東京都の場合は、各運転免許試験場、各運転免許センター、各警察署で申請することができます。

 

個人的には移動して窓口へ行ってしまったら感染防止のためにあまり意味が無いように感じるのですが、郵送できない場合は窓口へ行きましょう。

 

郵送の場合、同封する書類や送付先が各都道府県で異なります。必ず「●●県 運転免許更新 延長手続き」と検索するなどして、間違いのないようにしましょう。

 

手数料

手数料は、窓口へ行けば無料で対応してくれます。郵送の場合は、発送料が掛かってしまいます。

 

必要書類

東京都が指定しているのは、「運転免許証」と「更新連絡はがき」の2つです。しかし、代理人が申請する場合は、代理人の身分証明書等が追加で必要となりますので、窓口へ行って無駄になることがないよう、事前に各都道府県の情報を確認しましょう。

 

運転免許の失効手続

 

万が一、有効期限内に延長手続きができず失効してしまった場合でも、新型コロナウイルスを理由として延長手続きができなかったと認められる場合には、失効手続きにより救済される場合もあります。

 

当然、身体に異常がない方は必ず延長手続きをしなければなりませんので、油断せず手続きをしましょう。

 

まとめ

・運転免許の有効期限が令和2年7月31日以前の人は、申請により有効期限を3か月延長できる

・各都道府県によって免許更新手続きが再開されるタイミングは異なるので注意

 

大変な時代ですが、運転免許手続きは漏らさないように注意しましょう。

 

ドライブレコーダーって必要なの?

今回は、最近利用している人が増えてきた「ドライブレコーダー」について書いていきます。

 

ドライブレコーダーは発売当初は殆ど利用している人が居ませんでしたが、最近はじわじわと装着する人が増えてきて、子ども夫婦が、高齢になった自分の両親へプレゼントとして贈る場合も増えていると聞きました。

 

私自身、交通事故に関わる仕事をしている中でも、ドライブレコーダーの有用性にはしばしば驚かされます。

 

そこで、今回は「ドライブレコーダーって必要なの?」という疑問にお答えするような内容を書いていきます。

 

ドライブレコーダーとは

 

ドライブレコーダー

 

 

そもそもドライブレコーダーとは、「車上に搭載するカメラ」のことで、主に交通事故に遭った際に周辺状況を映像で確認するために用する物のことを言います。

 

例えば、車内のフロントガラス辺りに設置すれば、運転者目線で車両前方の映像が撮影され、追突をしてしまった時の詳しい経緯がデータとして残ることになります。

 

交通事故に至った詳しい経緯が映像として残れば、事故状況を届け出る際に「向こうが急ブレーキしたんだ!」とか、「そっちが急に追突して来たんだ!」と意見が揉めても、客観的な証拠として用いることができるのです。

 

これは交通事故処理に関わる仕事をしている身としても大変便利で、「お互いの主張は分かりました。それでは、映像で事実を確かめましょう。」と、きちんと意見と事実の相違を確認できるので、トラブルを防ぐことができます。

 

最近は「テレマティクス保険」といって、車両に搭載したカメラ等の装置で「安全運転度」を算出し、その安全運転の度合いで自動車保険の保険料を決定する物もありますが、この記事では主に、交通事故に備える意味でのドライブレコーダーを紹介します。

 

ドライブレコーダーの利用者が増えている理由

 

近年、「煽り運転」と呼ばれる悪質な道路上での犯罪行為の数々が明らかになり、その犯罪行為の一部始終をドライブレコーダーが捉えていたことがきっかけで、加害者が有罪となるケースが増えてきました。

 

ひと昔前までは、「ゆっくり走っている車は煽られて当然」といった暗黙の了解がありましたが、急に前方に割り込んで急ブレーキをしたり、車上から降りてきて殴りつけたりする過激な犯罪は、世の中に明らかになってきませんでした。

 

それが、ドライブレコーダーの登場で世に知れることとなり、危険な運転で挑発をする「煽り運転」が話題となったのです。

 

この時代の流れから、多くの人たちが、犯罪被害を未然に防ぐためにドライブレコーダーを装着するようになりました。また、子どもが新たに車を購入した時に、ご両親がドライブレコーダーの装着を勧めるケースも増えてきたようです。

 

このように、危険運転や犯罪行為を未然に防ぐために、昨今はドライブレコーダーの需要が増えています。

 

ドライブレコーダーの必要性

 

上述したように、犯罪に巻き込まれるのを防ぐために、ドライブレコーダーは非常に力になります。また、事故に遭ってしまった場合も、運転者の主張ではない事実の映像が残せるため、公平な審判がくだされる可能性が高くなります。

 

それらを踏まえると、ドライブレコーダーは非常に効果的なので、もし懐に余裕がある方は、購入を検討してみてはいかがでしょうか。ドライブレコーダーは搭載している機能によって値段もピンキリですので、一度はカーディーラーで選び方を尋ねてみると安心です。

 

ドライブレコーダーの選び方

 

機能によってドライブレコーダ-の選び方は変わりますが、私が思う「選ぶうえで重要なポイント」は次の2つです。

 

① どこに装着し、どの範囲を撮影できるか

 前方のみ。後方のみ。365度撮影などの種類があります。

 

② 録画可能時間

 盗難防止を意識するなら、録画できるデータ容量が多い方が望ましいです。そういった要望もあれば、選ぶ際の基準にしましょう。

 

まとめ

 

・ドライブレコーダーは、車上に搭載するカメラのこと。危険運転や煽り運転を撮影でき、トラブルの未然防止、トラブル後の事実証明に役に立つ。

 

・「①どこに装着し、どの範囲を撮影するか」と「②録画可能時間」を踏まえて、ドライブレコーダーを選ぶと良い。

 

皆さんもドライブレコーダーで安全に運転しましょう。

 

 

 

 

自転車保険の義務化って知ってる?罰則はあるの?

ようやく4月になり、風が強いものの穏やかな気温の日が続いている気がします。

 

さて、昨今はコロナウイルス関連の報道が途絶えることを知らないため、大事なニュースが埋もれがちだと感じています。

 

そこで今回は、4月から施行された、「東京都の自転車保険の加入義務化」に関する条例について書いていきたいと思います。みなさんもあまりチェックしていないニュースなのではないでしょうか。

 

特に気になるのは、罰則があるかどうかですね。東京都の条例を確認し、交通事故の抑止に努めましょう。

 

東京都の条例の内容

自転車事故

 

今回4月から施行された条例の要旨は次のようなものです。

 

1.自転車利用者もしくはその保護者の、自転車損害賠償保険等への加入を義務化

2.自転車の販売業者は、購入者が自転車保険に加入しているかを確認し、加入して

  ない場合は保険加入の情報提供をするよう努力義務化 

3.雇用主は、従業員が自転車保険に加入しているかを確認し、加入していない場合は

  保険加入の情報提供をするよう努力義務化 

4.レンタルサイクル事業者は、利用者に対して自転車保険に加入するよう促す努力義

  務化

5.学校は、児童・生徒に対して自転車保険に加入するよう促す努力義務化

 

上述のような内容の条例が4月1日から東京都で施行されています。

 

注目したいのは1つ目の文章です。自転車を利用する人だけでなく、子供が利用する場合はその保護者が、自転車保険への加入の義務を負います。

 

つまり、自分が運転しないと思っている方でも、中学生や高校生のようなお子さんが通学などで自転車を普段から利用している場合は、自転車保険への加入が義務ということになります。

 

罰則はあるのか

東京都の条例であり、罰則はありません。したがって、自転車保険に加入しないまま運転していたからと言っても、何か罰金を払うようなことにはなりません。

 

義務化と言うと違反したときに罰金を支払うものと思いがちですが、必ずしもそうではありません。例えば車であっても、後部座席のシートベルト着用は義務化されていますが罰則はありません。(高速道路は別です)

 

今回の東京都の条例についても罰則はありませんので、現在自転車保険に加入していないからといって、大慌てで加入する必要はなさそうです。

 

ただし、東京都で義務化されるということは自転車保険の必要性が社会的に叫ばれているということに間違いはありません。



自転車の事故でも高額の賠償責任を負うことに

車を購入したら、当たり前のように対人賠償や対物賠償の自動車保険に加入する人が多いです。これは、車を運転している際に加害者になってしまった時の賠償責任金額が大きいということがよく知られているからです。 

 

しかし、実は自転車を運転している際の事故でも、高額の賠償責任を負うことが多々あるのです。

 

高額の賠償責任が命じられた裁判の判例は、下記の過去記事から読むことができますので、ぜひご確認ください。

 

www.jazz-days-logs.net

 

 

自転車保険に加入する前に

最後に、自転車保険に加入する前に気を付けて欲しいことを記載します。

 

自転車保険は、自動車保険や住宅の火災保険などに付帯して加入することができる場合があります。

 

そのため、自転車保険に新規加入する前に、まずはご自身が加入している自動車保険や火災保険の内容を確認し、重複してしまわないかチェックしておきましょう。

 

自転車保険の保険料はピンきりですが、安価だとしても重複加入して保険料を無駄に支払うことがないように気を付けたいですね。

 

また、自転車保険をどの保険会社で加入したらよいか迷った時は、今の自動車保険や火災保険に付帯できないかを相談してみるのも良いかもしれません。そうすることで、加入している保険会社がバラバラにならず、分かりやすくなりますね。