実況見分調書とは?作成目的、取り寄せ先等を解説

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人身事故で必ず行われるのが警察の実況見分です。そこで、今回は、警察が作成する実況見分調書について解説いたします。

 

1.実況見分調書とは

 

交通事故における実況見分調書とは、警察が交通事故現場で交通事故状況を見分(見たり、聴いたり)した結果を記載した書面のことをいいます。交通事故状況といいますが、具体的には

 

・見分の日時、場所

・見分場所

・交通事故現場の道路状況

・加害者・被害者の車の状況

・立会人(加害者、被害者、目撃者)の指示説明

が記載されており、交通事故状況をよく視覚化するため、実況見分調書には

 

・交通事故現場見取り図や写真

 

などが添付されています。

 

2.実況見分調書を作成する目的

 

警察が実況見分調書を作成する目的は、刑事事件における交通事故状況の立証のためです。

警察は民事不介入の立場ですから、実況見分調書を加害者に対する損害賠償請求のため、つまり民事事件のために作成しているわけではありません。また、交通事故状況は加害者や被害者の話のみならず、図や写真などを使うことによって視覚的に表現した方が分かりやすいといえます。

そこで、警察は刑事事件において被疑者、被告人の交通事故状況の立証を容易にするために実況見分調書を作成しているのです。

 

3.民事事件と実況見分調書

 

もっとも、民事事件において、実況見分調書が全く活用されないかといえば、そういうわけではありません。

たとえば、民事事件においては、

 

被害者側と加害者側との間で過失割合を巡って争いが生じている場合

 

に、交通事故状況を確認したい、というときに実況見分調書が活用されます

 

4.実況見分調書の取り寄せ先、取り寄せ方法

 

実況見分調書は、加害者(刑事事件では被疑者・被告人)の刑事手続きがどの段階にあるかによって取り寄せ方や取り寄せ方法などが異なります。

⑴ 加害者に対して刑事処分(起訴、不起訴)が下される前の段階

 

 

この段階では、まだ取り寄せることができません。

 

⑵ 加害者の刑事処分が不起訴処分となった後

 

不起訴処分となった刑事記録(不起訴記録)は警察から事件が送致された送致先の「検察庁」で保管されています。不起訴記録は不開示が原則ですが、民事の損害賠償請求のためなど、特定の目的が認められる場合には実況見分調書を取り寄せることが可能です。取り寄せる方法は以下のとおりです。

① 弁護士から検察庁への照会(弁護士法23条照会)による方法

② 被害者本人が検察庁へ出向き申請する方法

③ 代理人弁護士又は事務員が検察庁へ出向き取り寄せる方法

⑶ 加害者が起訴された後

 

検察官が加害者を起訴した後、裁判所に刑事記録を提出した後、刑事記録は「裁判所」あります。被害者、被害者遺族、代理人弁護士は裁判所に対して刑事記録の謄写申請を行って実況見分調書を取り寄せます。

⑷ 加害者の刑事裁判が確定した後

 

加害者に判決が下され、刑事裁判が確定した後は、刑事記録は第一審裁判所に対応する「検察庁」で保管されます。そして、以下の方法により、検察庁に対して申請を行って実況見分調書を取り寄せます。

① 被害者本人が検察庁へ出向き申請する方法

② 代理人弁護士又は事務員が検察庁へ出向き申請する方法

 

5.まとめ

 

加害者に対する害賠償請求する民事の場面では、実況見分調書は、過失割合などを巡って争いが生じ、交通事故状況を詳細に検討しなければならない場合に必要となる書類です。実況見分調書は刑事訴追のため警察が作成するものですが、刑事事件の段階によって申請先が「検察庁」あるいは「裁判所」となります。実況見分調書を取り寄せる際は、まずは加害者の刑事手続きがどの段階まで進んでいるのか確認する必要があります。