弁護士特約に加入していなかった場合、どうするか?

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弁護士特約、通称「ベントク」ですが、今やほとんどの損害保険に特約として付されています。

 

弁護士特約のメリットは、何といっても高額の弁護士費用を保険会社が負担してくれる、という点にあります。

 

それでは、弁護士特約が付されていなかった場合、どうしたら良いでしょうか?

今日はその点について、ご説明します。

 

1.他の保険を確認してみる

交通事故の場合、使う保険は、車両の損害保険です。

交通事故に遭った際、自分が加入する損害保険会社に連絡し、担当者から「残念ながら弁護士特約には加入されていないようです」と言われたとします。

それでも諦める必要はりません。

 

なぜなら、車両の損害保険の担当者は、その損害保険に弁護士特約が付いているかどうかは当然把握していますが、他の保険に弁護士特約が付いているかどうかは知らないからです。

今や、様々な保険に弁護士特約が付いています。

 

たとえば、自宅の火災保険、自転車の損害保険、生命保険等にも弁護士特約が付いていることがあります

 

また、自分自身だけでなく、家族名義の生命保険、損害保険に弁護士特約が付されている場合、その弁護士特約が使える可能性もあります

まずは、他の保険に弁護士特約が付いているかどうか、交通事故が対象になるかどうか、各保険会社に確認してみることがオススメです。

 

2.自費で弁護士を頼む場合の弁護士費用

調べてみたけれども弁護士特約がなかった場合、弁護士費用は自己負担にならざるを得ません。

 

弁護士費用は、一般的には、着手金と報酬金に分かれています。

着手金は、弁護士が業務をはじめる前に、支払わなければならないお金です。

報酬金は、事件が終わった後、たとえば相手方から支払を受けた金額の〇%という形で発生するお金です。

報酬金は、相手方から支払を受けた後に支払えば良いのですが、問題は着手金です。

着手金は弁護士事務所ごとに様々ですが、20万円~というように高額であることが一般のように思います。

 

3.弁護士費用を用意することが難しい場合

以上のように、弁護士費用のネックは着手金です。

これを用意することが難しい場合、どうしたら良いでしょうか?

 

まず、交通事故に関しては、着手金無料で依頼することができる弁護士事務所もあります。

そこで、まずは、インターネットなどで、着手金の負担なく依頼できる弁護士事務所を探すことが考えられます。

 

次に、経済的な理由で弁護士費用を捻出できない方のための制度として、「法テラス」という制度もあります。

これは、簡単には、「法テラス」が弁護士費用を立て替えて支払い、後で「法テラス」に分割で(月5000円~1万円程度)弁護士費用を返していく仕組みです。

 

個人的には、最寄りに着手金無料で依頼できる弁護士事務所がある場合には、そこで相談し、最寄りに着手金無料で依頼できる弁護士事務所がない場合に、「法テラス」の利用を検討することがオススメです。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

弁護士費用は高額になりがちですが「安かろう悪かろう」では意味がありません。

場合によっては、色々な弁護士事務所にご相談に行かれることも一考かもしれません。

人身傷害保険を利用する場合の注意点(2021年9月現在)

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前の記事で、人身傷害保険の使い方についてご説明しました。

人身傷害保険ってとても役に立つものだなー、ということがお分かりいただけたと思います。

ただ、最近、人身傷害保険に関する注目の裁判例が現れ、当面の間、人身傷害保険の使い方に注意が必要と思われます。

今日は、人身傷害保険を利用する際の注意点を簡単にご説明します。

 

人身傷害保険が支払われるまでの流れ

たとえば、次のようなケースを考えてみます。

  • 私が、交通事故に遭って、むちうちになった。
  • 私の過失が大きかったため、相手方保険会社から「一括」を拒否された。
  • 加入していた人身傷害保険を使って、人身傷害保険会社から治療費の支払を受けながら通院をした。
  • 治療がひと段落した後、自賠責に後遺障害申請をしたところ、14級の後遺障害の認定を受けた。

 

この場合、人身傷害保険会社に対しては、2パターンで保険金を請求できます。

 

パターン1先に、事故の相手方に対して賠償金の請求をし、相手方から賠償金を受けられなかった部分について人身傷害保険会社に保険金の請求をする。

 

パターン2先に、人身傷害保険会社に対して保険金の請求をし、人身傷害保険会社からの保険金では足りない部分について相手方に請求をする。

 

理論的には、どちらも取れる賠償額は変わらないはずです。

 

ただし、パターン2の場合、人身傷害保険会社から「人身傷害保険金を受け取った場合には、自賠責保険金の請求権が人身傷害保険会社に移転し、自らは請求しないことを確認します」といった内容の確認書面にサインを求められることが通常です。

 

ところが、この確認書面の取り扱いに注意が必要なのです。

 

人身傷害保険会社と書面を取り交わすときの注意点

一般の方にとって、「自賠責保険金の請求権が移転するって何のこと?まあ、いいか」と思うことが通常です。

そして、これまでは、それで十分でした。

 

しかし、2020年3月、福岡高裁の裁判例が出ました。

この裁判例を説明するのは大変なので割愛しますが、要するに、人身傷害保険会社と取り交わした確認書面の内容によっては、自分が受け取ることができる賠償額が減ってしまうかもしれない!というものなのです。

 

この裁判例の妥当性については、最高裁で決着が着くだろうと思いますが、少なくとも現時点では、人身傷害保険会社と書面を取り交わす際には十分注意が必要です。

 

そのため、人身傷害保険会社から書面の取り交わしを求められた際には、必ず、弁護士等の専門家に相談することをオススメ致します。

 

いかがだったでしょうか。

今後、最高裁で結論が変わるかもしれませんが、当面の間は、人身傷害保険会社との書面の取り交わしには十分注意していただければと思います。

 

以上

人身傷害保険の使い方

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交通事故でよく耳にする人身傷害保険。

加入率は約70%といわれてますから、読者の方でも加入されている方も多いことと思います。

では、人身傷害保険は、どういう場合に使える保険なのでしょうか?

今日は人身傷害保険の使い方についてご説明いたします。

 

人身傷害保険は自分の過失をカバーする保険

たとえば、交通事故に遭って怪我をし、1000万円の損害を受けたとします。

この時、自分に過失がなければ良いのですが、通常、何らかの過失が認められることが一般的です。

仮に2割の過失が認められたとします。

そうすると、事故の相手方から賠償を受けることができるのは、1000万円の2割引きである800万円にとどまり、差額の200万円は「自己負担」ということになります。

自分の過失部分をカバーするのが、人身傷害保険の主な目的です。

上の例の場合、人身傷害保険に加入していれば、本来「自己負担」であった200万円が、人身傷害保険会社から支払われることになります。

結果として、相手方からの800万円+人身傷害保険会社からの支払200万円の合計1000万円全額の支払を受けることができるのです。

 

相手方の保険会社が一括を拒否・一括を打ち切られた場合に使える

交通事故で怪我をして通院をする場合、一般的には、相手方が加入する任意保険会社が病院に治療費を直接支払い、自分自身は窓口での支払をする必要がありません。

また、治療のために休業して減収があった場合には、相手方が加入する任意保険会社から、休業損害の支払を受けることができます。

このように、事故の相手方が加入する任意保険会社が、治療費や休業損害の支払を行うことを「一括」と呼んだりします。

しかし、たとえば自分自身の過失が大きい場合には、相手方保険会社が「一括」を拒否することがあります。

また、「一括」はあくまで「サービス」なので、治療の途中で「一括」が打ち切られることもあります。

このように、相手方保険会社が「一括」を拒否したり、「一括」が打ち切られてしまった場合にも、人身傷害保険が役に立ちます。

つまり、人身傷害保険を使って、自己負担なく病院に通院し、あるいは通院のために減収が生じた場合には、その分の休業損害を補償してもらうことができるのです。

もっとも、無限にカバーされるわけでなく、一定の上限があることには注意が必要です。

 

相手方が無保険であった場合にも使える

2の延長で、人身傷害保険は、相手方が無保険である場合にも、当然、役に立ちます

事故の相手方が無保険(場合によっては強制加入である自賠責にすら加入していないこともあります!)であった場合、相手方から十分な賠償が受けられないリスクがあります。

この場合でも、人身傷害保険に加入していれば、人身傷害保険会社から、損害をカバーする保険金を受領できるのです。

 

いかがだったでしょうか。

人身傷害保険に加入されている場合には、交通事故の際、最大限に活用したいものですね。

 

以上

交通事故で使える保険

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交通事故では実に様々な保険が登場します。

今回は、交通事故で登場する保険の種類と使う場面を整理したいと思います。

車両の損害に関する保険と、怪我に関する保険とで分けた方が分かりやすいので、分けて説明します。

 

車両の損害に関する保険

① 車両保険

これは、自分の車が壊れた場合に、自分の車の修理費をカバーしてくれる保険です。

② 対物賠償保険

これは、相手の車を壊してしまった場合に、相手の車の修理費等をカバーしてくれる保険です。

 

怪我に関する保険

① 自賠責保険

すべての車両が加入することを義務づけられている強制加入の保険です。

交通事故で怪我をした場合、相手方が加入する自賠責保険から、最低限の賠償を受けることができます。

② 任意保険

通常、自賠責保険に加えて、CMなどでよく見る損害保険に加入していることが一般です。

というのも、交通事故で大きな怪我を負わせてしまった場合、場合によっては損害賠償金が1億円を超えることもあります(!)

このような高額の損害賠償は、自賠責保険ではカバーできないため、任意保険に加入するのです。

交通事故で怪我をした場合、相手方が加入する任意保険会社から、損害の賠償を受けることができます。

③ 人身傷害保険

①②の自賠責保険、任意保険は、いずれも事故の「相手方」が加入する保険です。

では、事故の相手方がこれらの保険に加入していなかった場合、どうなるでしょうか?

また、自分が事故の加害者となってしまった場合、いかに大きな怪我を負ったとしても、自分の方に大きな過失があれば、どうでしょうか?

いずれも相手方から十分な賠償を受けることができません。

このように、相手方から賠償を受けられないリスクに備える保険が、人身傷害保険です。

人身傷害保険は、自分自身が加入する保険であるという点で、自賠責保険・任意保険と異なります。

④ 健康保険・労災保険

交通事故で被害を受けた場合、通常、加害者が加入する任意保険会社が、治療費や休業損害等、様々な損害金の支払を行います。

そうすると、被害者側では、加害者側の保険会社からの支払に加えて、健康保険や労災保険を使う必要がなく、健康保険や労災保険は登場しません。

他方、自分が交通事故の完全な加害者となってしまい、かつ怪我を負ってしまった場合はどうでしょうか。

この場合、事故の相手方が加入する任意保険会社が、治療費等の支払を拒むことがあります。

そうすると、自費で通院せざるを得ません。

しかし、10割の治療費を負担することは現実的ではありませんよね。

そこで、健康保険を使って自己負担3割で通院することが考えられます。

また、事故が通勤中の事故であった場合には、労災保険が使えるかもしれません。

労災保険では、治療費の自己負担はゼロです。

このように、健康保険・労災保険は、相手方から賠償金の支払を受けられない場合に利用を検討する保険といえます。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

今日は複雑な話となってしまいました。

特に、怪我に関する保険は相当複雑です。

どういった保険が利用でき、また、何が一番良いかについては、ご自身が加入している保険会社担当者や、場合によっては弁護士等の専門家に尋ねてみることをオススメ致します。

 

以上

交通事故の業界用語

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交通事故では、多くの業界用語が飛び交っています。

あまり親切でない保険会社の担当者さんだと、一般の方が相手でも、保険会社同士で話をするのと同じような感覚で話されることもあります。

分からない言葉が出てきても、「それってどういう意味ですか?」と聞くことができれば良いですが、少し恥ずかしい時もあるかもしれません。

そこで、今日は、交通事故で使われる業界用語をご紹介したいと思います。

 

ジバイ

ドバイではありません。

これは強制加入保険である「自動車損害賠償責任保険」、もう少し馴染みのある表現だと「自賠責保険」のことをいいます。

また、自賠責保険は強制加入保険ですが、一般には、よくCMでやっているような保険会社の損害保険に加入していることが多いと思います。

自賠責保険が強制加入保険であるのに対し、これらの損害保険への加入は「任意」です。

したがって、自賠責保険との対比の意味で、任意に加入している損害保険会社のことを「任意保険会社」と呼ぶことがあります。

 

ブッソン・ジンソン

ブッソンは物損、ジンソンは人損と書きます。

交通事故に遭って、車両が壊れ、怪我もした場合、相手方に対する損害賠償は、車両に関する部分と、怪我に関する部分とに分かれる、と考えられています。

そこで、これらを分けるために、車両に関する部分のことを「物損」怪我に関する部分のことを「人損」と呼んだりするのです。

 

ショウジョウコテイ

症状固定と書きます。

これは保険用語で、簡単にいうと、「治療を継続しても良くも悪くもならない状態」に至ったことをいいます。

保険実務では、症状固定日までの治療費・休業損害等を加害者側が負担し、症状固定日以降は被害者側が負担するという区分けがされているため、「症状固定」という概念が必要なのです。

 

ブッソンセンコー

センコー=先生ではなく、物損先行と書きます。

交通事故で怪我をした場合、怪我の賠償に関する話し合いは、怪我の治療がひとまず終わった時、すなわち「症状固定」を待ってからすることが一般的です。

他方、怪我の治療は、場合によっては半年~数年かかることもあり、その間に車両の損害(物損)に関する話し合いだけでも先に解決したい、と考えられることがあります。

そこで、人損に関する話し合いよりも先に、物損に関する話し合いを行い、場合によっては物損に関する示談を成立させてしまうことを、「物損先行」といいます。

たとえば、保険会社担当者から「物損先行で話し合いができませんか」などと言われることがあります。

 

ベントク

弁護士特約の略です。

 

ジンショー

人身傷害保険の略です。

 

いかがだったでしょうか。

保険会社担当者と話をする際、実際に使ってみると、「こいつ、できる!」と思われるかもしれません。

ただ、間違えると恥ずかしいので、実際に使うというよりは、話を聞く際の参考程度に使っていただけますと幸いです。

 

以上

任意保険基準より弁護士基準の方が慰謝料相場は高い

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前回は、任意保険は被害者の慰謝料請求はしてくれないという内容で記事を公開しました。

 

任意保険基準より弁護士基準の方が慰謝料相場は高い

任意保険基準よりも弁護士基準の方が慰謝料相場は高いです。
では、具体的にどれくらい差がでるのでしょうか。
後遺障害慰謝料の場合を見てみましょう。

 

任意保険基準については、各保険会社で異なりますので、任意保険基準の後遺障害慰謝料は明らかにされていません。
自賠責保険基準よりも少しだけ高額になっているくらいであると考えられています。

 

旧任意保険基準という平成10年まで各保険会社で一律利用されていた基準を参照してみましょう。

 

この基準によれば、後遺障害慰謝料は第1級で1300万円となっています。
現在ではたしかに旧任意保険基準を使用する必要はなく、各保険会社が自由に自社の基準を設定していますが、この旧基準から大きく逸脱することはないと考えられます。

 

それでは裁判基準の後遺障害慰謝料はどうでしょうか。
裁判基準の後遺障害慰謝料は、赤い本によると第1級で2800万円です。

 

このように、後遺障害慰謝料の額を例に見てみても、任意保険基準と弁護士基準には1000万円以上の差がでていることが分かると思います。

 

この一例からも分かるとおり、被害者の方は任意保険基準よりも弁護士基準を目指した方が、受け取れる損害賠償金が増えることになります。

 

そして、弁護士基準が適用されるために最も簡単な方法は何でしょう。
それは、弁護士に依頼することです。

 

弁護士に依頼することで、被害者の方には様々なメリットがありますので、次にそれを解説していきます。

 

交通事故の示談交渉を弁護士に頼むメリット

交通事故の被害者が弁護士に依頼するメリットは何でしょうか。
具体的に解説していきます。

 

被害者と弁護士の利害関係が一致していること

まず、交通事故の被害者と弁護士とは、利害が一致することが大きなメリットです。
弁護士の報酬は、依頼者が回復できる経済的利益の内容に応じて決定されます。

この点、保険会社は被害者に保険金を支払う側ですので、被害者と保険会社は利害関係が対立する関係にあります。

 

しかし弁護士は、被害者が回収する金銭が多ければ多いほど弁護士報酬が増えるという関係にあるため、被害者と弁護士の利害関係は完全に一致しています

そのため、弁護士は被害者が損害賠償請求できる金額を最大化するために、全力を尽くしてくれます。

 

慰謝料について高額な基準が適用されること

繰り返し説明しているように弁護士に依頼することで、被害者の慰謝料算定の基準には、3つの基準の中で最も高額な弁護士基準が適用できるようになります。

そのため、被害者が回収できる損害賠償金を最大化できる可能性が高いという点で、被害者にメリットが大きいと言えるでしょう。

 

示談交渉を依頼するだけでも示談金が増額する可能性があること

裁判手続きで弁護士基準が適用される以外にも、弁護士に依頼することで示談金が増額する可能性があります。

被害者本人が保険会社と交渉しても、なかなか示談金が上がることはありません。
長期にわたり粘り強い交渉が必要になるでしょう。
しかし、交通事故に強い弁護士が被害者の代理人として交渉を始めると、途端に示談金が増額される可能性があります

なぜなら、保険会社としては被害者と示談交渉している段階ではただ増額を拒否していればいいだけですが、弁護士が介入した場合に拒絶し続けると、裁判手続に移行して弁護士基準での賠償を命じられる可能性があるからです。

そこで、保険会社としても弁護士が代理人についたときには、早期に示談金を増額して示談を成立させることに積極的になる動機があります。

 

まとめ

交通事故に遭って弁護士に依頼仕様とする場合には「弁護士費用特約」を利用することで、弁護士費用の被害者の負担を実質的に0円にすることができます。

 

これは保険会社が、最大300万円まで弁護士費用を被害者にかわって負担してくれるという制度です。
保険会社との交渉には専門的な知識も必要になってきますから、納得いく解決を導くためにもまずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

 

以上

任意保険は被害者の慰謝料請求はしてくれない?

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今回の記事では、任意保険は被害者の慰謝料請求はしてくれるのかどうかという点を中心に解説を進めていきます。

 

任意保険は被害者の慰謝料請求はしてくれない

被害者の方が加入している任意保険会社は、加害者となったときに交通事故の加害者と交渉することを代行してくれるだけですので、被害者となってしまった場合には示談交渉を代行してはくれません

 

つまり、交通事故の損害に対する過失割合が被害者:加害者で0:100であるような場合には、被害者には損害について自身が負担する部分が存在しません。
したがってこのようなケースでは、被害者が加入している保険会社は示談交渉をおこなってくれません。

 

このようなケースでは、被害者自身が加害者の保険会社の担当者と示談交渉せざるを得なくなります。

そして、相手方の担当者としては、相手が損害賠償制度や交渉の素人であるため、最も算定基準が低い自賠責基準に基づいて算出されて金額や、それより低い金額での慰謝料を提示してくる可能性があります。

 

では、このような場合、相手方の保険会社の担当者の思惑通り低額な慰謝料で示談してしまわないためには、被害者の方はどのように対応していけばよいのでしょうか。

  

自賠責基準よりも高い任意保険基準にするには何をすべき

自賠責保険基準は、任意保険基準や弁護士基準と比較して、非常に低い相場の慰謝料基準になっていることがほとんどです。

 

そうすると、自賠責保険基準が適用される場合には、満足のいくような解決は不可能なのでしょうか。

 

そこで、ここでは、自賠責保険基準からもっとも相場の高額な弁護士基準に少しでも近づける方法について、考えていきます。

 

示談交渉となった場合には、被害者が加入している保険会社だけではなく、交通事故の加害者側の保険会社とも相談することになります。

 

保険会社の担当者に損害賠償制度に知識がないと思われないこと

被害者自身が、保険会社や法律関係の会社で働いているというような事情でもなければ、一般的に損害賠償の制度について基本的な知識を持っていることは少ないでしょう。

加えて、相手方の保険会社の担当者も、被害者は通常損害賠償に関する知識など有していないと考えていることがほとんどです。

 

このような場合、加害者側の保険会社の担当者としては、交通事故の被害者が示談金として提示される保険金の額が適切かどうかを判断する能力はほとんどないと考えているということになります。

 

そのため、示談金として提示される保険金の額は、自賠責保険基準より多少多い金額か、自賠責保険基準同等の金額である可能性があります。

 

慰謝料算定の基準より低い提示額であっても、被害者が何も知らずに同意をしてしまうとその額で示談が成立してしまいます。
そして、それ以上の損害部分については、追加で請求することはできなくなります。

 

相手方の保険会社の担当者から提示された金額が、相場よりも低額であることに気付かないまま同意してしまい、後から気付いて後悔しないように気を付けなければなりません。

 

そのためには、示談金を提示してきた保険会社の担当者の説明を鵜呑みにせずに、どのような算定基準に基づいて示談金額を算出したのか、自賠責基準と比較してどれくらい差があるのかという観点から質問するべきでしょう。

 

さらに、日本弁護士連合会の慰謝料基準と比べてどれくらい低いのか、またそのように低くなっている理由はどのようなものなのかも尋ねましょう。

 

しかし、法律の素人である被害者の方がこれ以上、日々交渉を専門的に行っている保険会社の担当者と対等に渡り合っていくには限界があるのではないでしょうか。

 

ここで重要なのは、保険会社に対して、自分が損害賠償制度について一定の知識を有しているということをアピールしていくことが有効であるということです。

 

 

保険会社の担当者に感情をぶつけてはいけない

交通事故の被害者と加害者にとって、交通事故はその後の生活や人生に、決定的な影響や不可逆的な症状をもたらす可能性があります。

 

被害者としては混乱と不安を感じながら手続をしないといけませんので、どうしても感情的に相手方と接してしまい、ときには合理的な判断が難しくなる可能性もあります。

 

他方で、加害者が加入している保険会社の担当者にとっては、被害者の方と示談をまとめるための対応は全て日常的な業務のひとつです。

 

したがって、被害者の方が自分の想いを伝えたくて保険会社の担当者に感情的に訴えたとしても、担当者には敬遠されてしまうだけの効果しかないかもしれません。

 

それでは、被害者はどのように相手方の保険会社の担当者と接すればよいのでしょうか。

 

一般的に、加害者が加入している保険会社の担当者は、会社としての出費を低く抑えようという動機が存在しています。
そのため、自賠責保険基準や任意保険基準を下回るような低額な金額での保険金の見積もりを出して、和解案を提示してくるのです。

 

そこで、被害者としても、自分の感情ばかりを保険会社の担当者にぶつけるのではなく、根拠や基準を用いて論理的に示談できる金額を示していくべきでしょう。

 

交通事故の被害者が感情的になるのは仕方がない面もありますし、感情論に酌むべき点がまったくないとも言えませんから、「この点はどうしても納得できない」という想いはしっかりと担当者にも伝えるべきでしょう。

 

その際には、感情的にならずに感情を伝えることが重要です。

 

譲歩する余地があることも示す

被害者本人が、加害者側の保険会社の担当者と和解交渉を進めていくには大変なことです。
そして、交渉の素人である被害者自身が、一番相場の低い自賠責保険基準から一番相場が高い弁護士基準まで交渉して、慰謝料の算定基準を上げていくにはそれ相応の時間と労力が必要になることでしょう。

 

長期間の示談交渉となると、精神的にも肉体的にも疲弊してくるのは想像に難くありません。

そのような交渉の中で、弁護士基準まで算定基準が上がらなければ示談はしないという頑なな態度を固辞すると、なかなか和解することは難しいかもしれません。

 

他方で、任意保険会社の中には弁護士基準の80%程度までなら、自社の任意保険基準を上回るような金額になっても支払ってくれるようなところも存在しています。

 

被害者としては、弁護士基準までとはいかずとも、一定程度まで示談金が上がったら譲歩するという姿勢も重要です。

 

そこで、自賠責保険基準や一般的な任意保険基準では納得できない旨を、理由を付けて保険会社の担当者に伝えておくべきでしょう。
そして、話し合いで合意に至らなかった場合には、弁護士に依頼することも検討しているということも担当者に伝えておきましょう。

 

まとめ

 このように、被害者の方自身で譲歩できる最低ラインを決めておき、そのラインを目指して話し合いをすることが、自賠責保険基準や任意保険基準を上回るような保険金を支払ってもらうために有効な手段だということができるでしょう。

 

以上

死亡事故ではすぐに弁護士に相談したほうがいい理由と費用相場

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前回は死亡事故の被害に遭ったらすべきことについて詳しく解説をしました。

 

今回は弁護士に依頼すべき理由などについてみていきたいと思います。

 

死亡事故ではすぐに弁護士に相談したほうがいい理由

家族が死亡事故に遭った場合には、何故弁護士に依頼したほうがよいのかについて解説していきます。

 

死亡事故の場合には、加害者には刑事手続が進行する可能性があります。

 

そして、刑事事件では被害者と示談していることが加害者側にとって有利な事情になります。
加害者としては、早急に遺族と示談してしまいたいという動機があるのです。

しかし、遺族の方にとっては、気持ちが整理できないままに加害者のペースで示談に応じてしまい、さらにその示談の内容も被害回復には十分でないリスクもあります。

したがって示談については加害者のペースに巻き込まれず、遺族がじっくりと吟味できるようにする必要があります

また、交通事故では被害者にも一定の過失が認められ、賠償金が減額されるケースが多いです。

 

このような過失相殺を最小にしたい場合には、証拠により事実を立証していく必要があります。

 

したがって、できるだけ証拠が散逸する前に収集しておく必要が出てきます

 

上記のような対応は、遺族の方だけではなかなか困難なものでしょう。

 

したがって、遺族の方はできるだけ弁護士に依頼して、ご自身の負担を軽減することが得策です。

 

 

弁護士に依頼した場合にかかる費用と相場

それでは、ここでは死亡事故の被害を弁護士に依頼するとした場合にかかる費用について解説していきます。

まず、交通事故被害を弁護士に相談した場合には一般的に次に掲げるような弁護士費用が発生します。

 

  1. 相談料
  2. 着手金
  3. 成功報酬
  4. 日当
  5. 実費
  6. 消費税

 

 

(1)相談料

相談料とは、弁護士に依頼する前に相談する際にかかる弁護士費用を言います。

 

相談料は、相談時間に応じて発生することが一般的です。

 

1時間あたり5000円~10000円ほどが相場です。
また、事務所によっては初回や事件類型に応じて相談料を無料にしている弁護士事務所もあります。

 

(2)着手金

着手金とは、弁護士に依頼すると決めた場合に発生する弁護士費用を言います。

 

初期費用とも言われますが、着手金は弁護士が活動するために必要になる資金です。

 

高額な損害賠償請求を加害者にする場合には、それに応じて弁護士へ支払う着手金も高額になる場合が多いでしょう。

 

(3)成功報酬

成功報酬とは、依頼していた案件が終了した場合に、解決した内容に応じて発生する弁護士費用を言います。

 

たとえば、交通事故の場合には加害者から回収できた損害賠償金額の〇〇パーセントなどと表示される費用体系です。
多額の損害賠償を得ることができれば、それに応じて弁護士への報酬も高額になる性質のものです。

 

(4)日当

日当とは、弁護士が遠方に出張などをする場合に発生する弁護士費用のことを言います。

日当とは交通費とは別に発生する費用です。
日当の相場は、1日あたり3万円から5万円程度が多いようです。

 

(5)実費

実費とは、案件を進めるにあたり実際にかかる費用を言います。

 

仮に弁護士に依頼せずに、被害者遺族がご自身で手続を進めた場合でも発生する費用です。

 

たとえば、裁判を起こす場合にかかる収入印紙や郵送切手代、必要書類を発行するためにかかる事務手数料や通信費等が実費に当たります。

 

(6)消費税

弁護士に支払う費用には別途消費税が発生します。

 

消費税は弁護士に支払う費用ではありませんが、回収できた賠償金に応じて高額になる場合があります。

 

弁護士選びのポイント

交通事故の死亡事故に強い弁護士の選び方のポイントについて解説します。

被害者の遺族の方はできるだけ交通事故に精通している弁護士に依頼するべきでしょう。

そのような弁護士であるかどうかは、

 

  1. 交通事故について専門的な知識を有していること
  2. 豊富な実績があること


に着目するといいでしょう。

そのような要素を判断には、その弁護士が、豊富な医療知識と自動車工学の知識があるという要素も重要です。

そして、年間どのくらいの交通事故案件を手掛けているのかということや、死亡事故から重大な後遺症または軽微なむち打ち症等どのような案件の解決実績があるのか、ということを把握しておきましょう。

 

まとめ

今回は、死亡事故ではすぐに弁護士に相談したほうがいい理由と費用相場について解説をしました。

家族が亡くなった場合には今後精神的にも肉体的にも辛い手続が続きます。
そのような中では、是非専門的な知識を有する弁護士に依頼して負担を軽減するべきでしょう。

 

以上