交通事故による慰謝料の相場と計算方法(1)

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交通事故に遭って精神的な苦痛を受けた場合、被害者が加害者に請求できる慰謝料は3つあります。具体的には、「死亡慰謝料」、「後遺障害慰謝料」、「入通院慰謝料」です。

 

死亡慰謝料とは、交通事故で被害者が死亡したときに請求できる慰謝料をいいます。後遺障害慰謝料とは、交通事故で「後遺障害」と認定される後遺症が残ったときに請求できる慰謝料になります。また、入通院慰謝料とは、入院または通院して交通事故で負った怪我を治療する場合に認められる慰謝料です。

 

上記3つの慰謝料の相場や計算方法は、適用される算出基準によって異なります。そこで、死亡慰謝料、後遺障害慰謝料、入通院慰謝料の相場や計算方法はどのようになっているのでしょうか。それぞれの慰謝料の相場や計算方法を、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準に分けて解説していきます。

 

死亡慰謝料の相場と計算方法

死亡慰謝料として請求できる金額の相場や計算方法は、被害者の属性や遺族の人数によって異なります。

 

自賠責保険基準では被害者本人と遺族が請求できる慰謝料を合計して計算する

自賠責保険基準で死亡慰謝料を算出する場合、被害者本人の慰謝料と遺族の慰謝料を分けて計算し、その合計が請求できる金額になります。

2020年度版の「交通事故裁判の損害賠償額算定基準(通称赤い本)」によると、被害者本人の慰謝料の金額は400万円と定められています。上記の通称赤い本とは、交通事故裁判で示される慰謝料などの損害賠償の基準となる額が掲載されている書籍です。交通事故に遭って死亡した被害者の年齢、学歴、職歴、収入などを問わず、請求できる金額は一律となっています。

一方、遺族の慰謝料は、その人数によって請求できる金額が異なります。具体的な慰謝料の請求可能額は、遺族が1人の場合は550万円、2人の場合は650万円、3人の場合は750万円です。さらに、被害者の扶養になっている者がいれば、さらに200万円が追加されます。

また、ここでいう慰謝料を請求できる遺族とは、法律の定めや裁判所の判例の見解で示されている者を指します。法律(民法)では、被害者の配偶者、両親、子が慰謝料を請求できる遺族として規定されています。一方、裁判所の判例では、被害者の祖父母や兄弟も慰謝料請求できる旨の見解が出されているところです。

上記により、自賠責保険基準で計算した死亡慰謝料の相場は、400万円~1000万円台の金額になります。

 

任意保険基準では被害者の属性によって相場が決まる

任意保険基準で死亡慰謝料を算出する場合、被害者の属性によって請求できる金額の相場が決まっています。

一家の大黒柱の者が交通事故に遭って死亡した場合、請求できる慰謝料の金額の相場は、1500万円~2000万円です。交通事故で死亡したのが配偶者である場合、1300万円~1600万円が請求できる慰謝料の金額の相場になります。また、交通事故の死亡被害者が、高齢者や子である場合、請求できる慰謝料の金額の相場は、1100万円~1500万円です。

任意保険基準による慰謝料算出額は、1000万円~2000万円の範囲内になるのが通常です。自賠責保険基準で算出された慰謝料の金額よりも基本的には高くなります。しかし、高齢者や子が交通事故の死亡被害者である場合、自賠責保険基準で算出された慰謝料の金額の相場より低くなるケースもあります。

 

弁護士基準の死亡慰謝料の相場は最低2000万円以上

死亡慰謝料の弁護士基準による相場も、任意保険基準と同様に被害者の属性で決まります。ただ、どの属性においても、任意保険基準の相場よりも高くなっています。

交通事故の死亡被害者が、一家の大黒柱の者である場合、慰謝料の金額の相場は2800万円です。配偶者が交通事故で死亡したときの慰謝料の金額の相場は、2500万円となっています。また、交通事故に遭って死亡した者が、高齢者や子である場合の相場は、2000万円~2500万円となっています。

弁護士基準による慰謝料の金額の相場は、最低でも2000万円以上です。そのため、交通事故で被害者が死亡したときの実損害額も、このくらいの金額になることを把握しておきましょう。

後遺障害慰謝料の相場と計算方法

交通事故の被害者が加害者に請求できる後遺障害慰謝料の相場も、「交通事故裁判の損害賠償額算定基準(通称赤い本)」に掲載されています。実際に後遺障害慰謝料を請求する場合、上記の相場を基準に金額を算出します。

各算出基準の後遺障害慰謝料の相場は、下記の表のとおりです。

等級 自賠責保険基準 任意保険基準 弁護士基準
第14級 32万円 40万円 110万円
第13級 57万円 60万円 180万円
第12級 94万円 100万円 290万円
第11級 136万円 150万円 420万円
第10級 190万円 200万円 550万円
第9級 249万円 300万円 690万円
第8級 331万円 400万円 830万円
第7級 419万円 500万円 1,000万円
第6級 512万円 600万円 1,180万円
第5級 618万円 750万円 1,400万円
第4級 737万円 900万円 1,670万円
第3級 861万円 1,100万円 1,990万円
第2級 998万円(1,203万円) 1,300万円 2,370万円
第1級 1,150万円(1,650万円) 1,600万円 2,800万円

 

上記の表では、自動車損賠賠償保障法施行令の後遺障害等級ごとに、各算出基準の後遺障害慰謝料の相場が定められています。

交通事故でむちうちになって後遺症が残った場合、後遺障害認定がなされる等級は、14級または12級です。14級の後遺障害認定がなされた場合、自賠責保険基準では32万円、任意保険基準では40万円、弁護士基準では110万円が相場です。一方、12級の後遺障害認定がなされた場合、自賠責保険基準では94万円、任意保険基準では100万円、弁護士基準では290万円が相場になります。

自賠責保険基準と任意保険基準の金額の差は数万円程度とあまり変わりません。しかし、弁護士基準の相場は、自賠責保険基準および任意保険基準の相場より2倍以上大きな金額となっています。

 

以上